ゆるいブログ

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INNOVATION STACKが面白かった

INNOVATION STACKが面白かった

図書館でたまたま見かけたので借りてきました。

山形浩生先生の訳した本は読みやすく面白い本が多いのですが、本書もとても良かったです。

Block(旧Square inc)の共同創業者が書いた本です。Blockと言えばTwitterの創業者でもあるジャック・ドーシーが有名ですが、本書を読んでいるとジム・マッケルビーも非常にエネルギッシュで有能な人であることがわかります。

本書の主題はタイトルにもある「INNOVATION STACK」で、STACKというのは「積み重ね」を意味します。STACKはプログラミングでよく利用するデータ構造の一つでもあります。「INNOVATION STACK」というのはそのまま「イノベーションの積み重ね」という意味です。今までに誰も解いたことがないような問題に対する解決はたった一つのアイデアで済むものではありません。そんなにシンプルな問題なら以前に誰かが解決しているはずです。アイデアを採用しようとしたら直面する困難が必ずといっていいほどあります、その困難をひとつひとつ解決していくことになります。そして構築された「イノベーションの積み重ね」が外部からの企業の参入を防ぐ堀となるというのが本書の主張です。

Blockは多様な金融サービスを提供している会社ですが、設立当初はスマートフォンで利用できるクレジットカード決済端末の会社でした。あるときAmazonが参入してきます。しかし、Amazonはわずか1年ほどで撤退しました。

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イノベーションの一つや二つをコピーうまくコピーするのは不可能ではありませんが、「イノベーションの積み重ね」全てをうまくコピーするのはAmazonほど優れた企業にも難しいということです。

 

例えばBlockの「イノベーションの積み重ね」として14個紹介されているのですが、上から3個を挙げると以下のようになります。

1「シンプルな料金体系」: クレジットカードの取引手数料は紙を輸送する費用として徴収していたのですが、現在も徴収されています。こういった意味を喪失した費用を排したシンプルな課金サービスを作りたいと考えました。

2「加盟無料」:Blockは顧客からは取引手数料を取りませんが、クレジットカード会社には取引手数料を支払う必要があります。ですので、少額取引だと損をしてしまうので大量の取引を行う必要がありました。そこで急成長するために加盟料は無料としました。

3「安いハードウェア」: 加盟店は気軽に加盟してくるので、ほとんどは使われない恐れがありました。ですので経費を抑える必要がありました。そのために安いハードウェアが必要でした。最初のカードリーダーの製造原価は97セントだそうです。

下の「イノベーション」は上の「イノベーション」で発生した課題を解決するための必然的に解決しなければならない課題となります。

こうしてできた「イノベーションの積み重ね」が Amazon の参入を防ぐための堀になりました。

 

こういった「イノベーションの積み重ね」がある例としては、テスラが思いつきました。テスラはエネルギー問題の解決のための企業として設立されました。単純にEVを作るだけではなくバッテリーや電力システムなどのエコシステムを作り、製造を加速するためにロボットに支えられたテスラギガファクトリーを作り、間接費を抑えるために広告を出すのをやめ、Elon Maskの言動に注目を集めることでテスラ車の宣伝を容易にしています。

 

本書にも書いてある通り、「イノベーションの積み重ね」というのは困難な課題を解決するために必然的に生まれるものなので、知ったところで真似できるものではありません。しかし、新規産業の中核企業がGAFAMのような大資本かつ経営層も現場も優秀な巨大企業に対抗できる理由の一つがわかり面白かったです。

 

また、ワンアイデアでものを作って困難が出てきたら諦めるのではなく、アイデアを積み重ねて作り上げていくというのはとても良い考え方なので積極的に真似をしていきたいと思います。