ゆるいブログ

毎日おもったことや、やったことをただただ書いていくブログです

ファスト&スローの上巻を読み終わった

今日は出張だったので、新幹線の中で読書

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で第1部を読み終わったので第2部および第3部の前半までを読みました。

第2部では第1部で紹介したシステム1およびシステム2がどのように物事を見誤るか、が書かれています。

少数の法則

統計学では大数の法則というものがあります。これは十分に試行回数が多ければある事象の起こる確率と実際の出現回数が等しくなる、というものです。

例えばサイコロで1の目が出る確率は1/6で、サイコロを10回振るくらいだと1 はたまたま3回出ることも、1回も出ないこともあり得ますが60000回サイコロを振れば 1 の目が出る確率はおおよそ10000回前後におさまるはずです。

こういった、試行回数が多くなると事象の起こる確率と実際に出現する回数が一致するという法則を大数の法則と言うのですが、ここで言う少数の法則は十分に試行回数があるわけでもないのに、大数のように確率に応じた回数だけ出現するはずだという錯覚です。

例えばチーム A とチーム B が戦ってチーム A が 4 勝 0 敗であったとします。この時に、私たちは直感的にチーム A の方が強いのだと思ってしまいます。十分な試行が行われたわけではないため、チームA の勝利は偶然である可能性も多いのですが、そのことに気付きません。チーム A が勝った理由を単純で一貫性のあるメッセージに求めようとします。Aというチームが強いのだ、監督がすごいとかエースがすごいとか。この誤謬を少数の法則と本書では呼んでいます。

少数の法則はシステム1による直感で行われます。

アンカリング

非常に有名な認知バイアスです。先行して示された数値によって、判断が歪められるというもので、たとえば2000万円のマンションの一部屋を指して「この部屋は1000万円だと思いますか?」と聞いた場合と「この部屋は3000万円だと思いますか?」と聞いた場合では、回答者が考える想定金額には大きな開きができます。

「慎重な調整を伴うアンカリング効果」と「プライミングによるアンカリング効果」との2つの効果が同時に動いていると本書では説明しています。

前者はシステム2による調整の作用です。理屈を積み上げて金額を上げていってこれ以上動かしてよいか確信が持てなったところで調整をやめるので、調整の打ち止めが速すぎてアンカリングされた値に近い数値で止まってしまう、という説です。たとえば1000万じゃ安すぎると考えて立地や日あたり、施設などを考えて値段を1300万まで上げていったがそこで止まってしまう、というような場合ですね。

後者はシステム1の作用です。高い値段を見せられると、これは高いものであると無意識に思ってしまう、というものです。

利用可能性ヒューリスティクス(想起ヒューリスティクス)

利用可能性ということばがわかりづらいのですが、人間は自分が想起しやすいものを優先して評価する、というものです。

例えば夫婦で家事を分担していてそれぞれに「あなたがしている家事は全体の何%ですか?」と聞けば合計は100% を超えます。これはそれぞれが自分のした仕事の方が明確に思い出せるので、自分の作業の評価が高くなってしまうというために起こる現象です。直感で判断するシステム1の作用となります。

利用可能性カスケード

利用可能性ヒューリスティクスにおける錯覚がニュースなどで報道されることにより積み重なり、社会レベルでのパニックや政府介入を引き起こすようなメカニズムを利用可能性カスケードと呼びます。

たとえば最近話題になったヒアリ問題を考えてみます。被害者は日本において10人はいってないだろうし、死亡者は今のところ0人だとは思いますが、何度もテレビで放映され、年間100人の死亡者が出る危険なアリという報道が行われ、騒ぎになりました。ヒアリのリスクは交通事故に比べれば比較にならないほど低いですが、報道により日に何度も目にすることによって交通事故と同程度に遭遇する可能性のある脅威であると錯覚しているのだと説明できます。

代表性と基準率

「眼鏡をかけた理屈っぽい青年がいます。この青年は大学に通う学生ですがこの学生の専攻は、コンピュータサイエンスでしょうか経済学でしょうか」という質問をうけて、「コンピュータサイエンス」と答えるのは統計的に誤謬であると説明しています。

そもそも経済学を学んでいる学生の方が割合として圧倒的に多いので、統計的には経済学を学んでいる可能性の方が高いのですが、眼鏡をかけた理屈っぽい学生というのはコンピュータサイエンスを学んでいる学生のステレオタイプ、本書で言うところの代表性があります。この代表性に騙されて本来確率の低い現象の発生確率を高く見積ってしまう、ということのようです。

原因と統計

人間は統計的な事実に心を動かされず、個別の事例には重きを置くという事例が紹介されています。

ニューヨーク大学で行われた人助け実験というものがあります、6人が個別のブースに入り、インターコムで自分の状況や悩みについて順番に2分ずつ話していくのですが、その中にサクラが混じっています。このサクラは喘息の発作が起こったかのような演技をし、死にそうな演技で助けを求めるのですが、15人の参加者の中ですぐ助けに向かったのは4人にすぎないというものです。

この人助け実験の情報を学生たちが教えられた後で、親切そうな人のインタビュービデオを見せてこの人が助けに行くかという推論を行ったところ、人助け実験の情報を知らない場合と同じように親切そうな人は助けに行ったに違いないと考えを変えなかったそうです。

平均への回帰

突出した成果を出した後で成績が落ちるのは多くの場合、二年目のジンクスなどではなく単なる平均への回帰である、という話でした。

システム1がサイコロの偏りから極端な予測をすることがあるので、直感を過信しないように気をつける必要があります。